宝石・メガネ・時計の谷川



もっと進化したぜんまい駆動

機械式時計と同じようにぜんまいのほどける力を動力源とし、水晶振動子によって、 精度を制御する。電池も充電池を使わずに、クォーツ式と同等の高精度を達成する。 このアイデアを実現するために、二十年以上の時間が必要だった。たとえば、極限まで要求された 歯車の加工精度をはじめ、エネルギーの伝達効率を徹底的に追求することではじめて、 当初は不可能とされていた技術的なハードルをクリアすることに成功した。

独創の機構

香箱という名のケースに収められたぜんまいを動力源として、 歯車から歯車に力を伝え、針を回転させるという点では、機械式とまったく同じだが、 機械式時計にはがんぎ車・アンクル・てんぷという脱進・調速機構がある。 一方スプリングドライブは、7番目の車にあたるローターが1秒間に8回転し、 そこで発生するごくわずかな電気エネルギーで、 水晶振動子を発生させ、高精度を実現する。

大胆不敵

このスプリングドライブのために開発されたのは「トライシンクロレギュレーター」と 名付けられた調速機構。ぜんまいで駆動する機械式時計の精度を上げるために、 昔からさまざまな仕組みが考案されてきた。しかし、その系譜の中で、もっとも革新的で 大胆な発想から生まれたのが、水晶振動子を使うスプリングドライブの トライシンクロレギュレーターといえるだろう。

72時間

グランドセイコーのために生まれた9R自動まきスプリングドライブムーブメントは、 精度だけではなく、抜群の巻上げ効率を誇る。世界の名だたる自動巻の機械式ムーブメント にもひけをとらないどころか、それらを凌ぐ能力で、72時間駆動するためのエネルギーを ぜんまいにたくわえることができるのだ。ムーブメントの開発からそれらを構成するパーツ の製造までを自ら手がけるマニュファクチュールでなければ、実現できないことがある。

究極の滑らかさ

スプリングドライブの特徴のひとつ、究極のスイープ運針。 機械式時計の秒針も一秒を6、8、10などに分割して刻むが、 スプリングドライブの秒針の動きの滑らかさはその比ではない。 自然の時間を「刻む」のではなく、時間の流れをそのままに表現する。 他の機構とは一線を画すスプリングドライブ独特の個性といえる。